相談:ある取締役の解任

先日、ある会社の社長から相談を受けました・・・

内容は・・・「ある取締役の解任」

 

やりとりは以下のような感じです。

 

社長:先生、ちょっと相談があって・・・

木下:どうぞ、どんな内容のご相談でしょうか?

社長:実は・・・ 

   ある管理職を1年前に取締役に就任させたんだけど、あまりの能力不足で・・・

木下:というと?

社長:要は・・・取締役を解任したいんだよ

木下:かっ、解任ですかっ(汗)

社長:解任できるかな?

木下:弁護士マターの案件になりますので、一般論しか回答できませんがよいですか?

社長:何となくの目安を教えて。

木下:わかりました。

   最初に、取締役の解任は株主総会の普通決議で行うことができます(会社法339、341)。

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(解任)

第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

(役員の選任及び解任の株主総会の決議)

第三百四十一条 第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。

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社長:私が株式(普通株式)を80%持っているから問題ないってことだね。

木下:そういうことになりますね。

   次に、解任の理由に「正当な理由が必要」となります(会社法339②)。

   実は、ここがかなり重要なポイントになります。

   つまり、「取締役としての能力不足」が正当な理由に該当するかが微量かもしれません。

   職務執行上の法令違反や定款違反など、明確な違反があれば問題ないように思いますが、

   能力不足だけでは理由としては不足してしまうかもしれません。

   詳細は弁護士への確認が必要になるかと思います。

 

社長:困ったな・・・

木下:さらに・・・

   正当な理由がない場合には、損害賠償請求がなされますが、その場合の損害額は、

   任期を満了していれば得られたであろう報酬等(賞与、退職慰労金含む)、になります。

   確か、社長の会社は取締役の任期を伸張していたかと思いますので、

   残りの任期が長ければ長いほど、損害額が膨らむことになります。

   我々税理士の世界では、受け取った損害額は一時所得なので源泉徴収不要ということで

   決着していますが、社長からしてみると、そんなことよりもキャッシュアウトすることが

   何よりの痛手ですよね・・・

(一時所得の参照HP:国税庁HPより)

https://www.nta.go.jp/about/organization/nagoya/bunshokaito/gensen/121128/01.htm

 

社長:そりゃあ、払いたくないのが本音だよ・・・

木下:そうですよね・・・

   であれば、任期満了まで待つか、損害賠償請求されるか、の二択になってしまうかも、です。

   それに、法令定款所定の取締役の員数確認も必要となります。

   つまり、欠員が生ずれば過料の対象となってしまいます(会社法331⑤、976㉒)。

 

社長:もう出口が見えないよ・・・

   こんなことなら役員の任期を伸張しなければよかったけど、とき既に遅し、だよね・・・

木下:ですね・・・

   ちなみに、残りの株20%は誰が持っていますか?

社長:専務取締役の長男が持ってるよ。

   長男の方が「絶対に解任してほしい」と言っててね・・・

   何か問題でもある?

木下:能力不足だけでは、不可能なので問題ないかと思いますが、リスクだけ話します。

   議決権基準(3%+6カ月保有)でも、株式数基準(3%+6カ月保有)でも満たしていれば

   取締役の解任請求に関する株主総会の招集が可能となります(会社法854)。

   今回のケースでは、社長80%・専務(長男)20%ですので否決されませんし、

   理由も法令違反など厳格なものが要求されていますので、今回のケースはリスクなしかと思います。

 

社長:色々とリスクがあるんだね。法律の無知は本当に怖いよ・・・

木下:本当にそうだと思います。だから、顧問弁護士が必要なんですよ。

   今後は顧問弁護士を予防法務の観点からお願いするケースが増えることになると思います。

社長:うちも顧問弁護士、お願いしようかな・・・

木下:税理士も弁護士も必要な時代じゃないですかね。

   でも、そもそも論ですが、解任すると会社の登記簿謄本(商業登記簿)に「解任」と記載され

   「解任」の履歴が残ってしまいます。

   信用調査上、これはかなりマイナスになることは想定しておいた方がいいかと思います。

   だから、世の中、なかなか「解任」がお目にかからないのだと思います。

   取締役の『就任』という「入口」は簡単に入れますが、

   『解任』という「出口」は果てしなく遠いですね・・・

代表:木下勇人

税理士法人レディング 代表: 木下 勇人

愛知県津島市出身、愛知県立旭丘高校、南山大学経営学部卒業。
2003年監査法人トーマツ名古屋事務所 ファイナンシャルソリューションズ部(相続事業承継の専門部隊)に配属され、法定監査に従事しつつも上場会社オーナー、上場会社級の非上場会社オーナーファミリーの事業承継対策に専門的に従事。
2009年名古屋で唯一の相続専門税理士法人を設立し、不動産オーナーを中心とする個人富裕層に対する不動産・財産コンサルティング、自社株問題を抱えるオーナー社長への事業承継コンサルティングを中心に業務を展開。生前対策相談は年間200件を超え、様々なジャンルの相談に対応可能。税理士としての立場はもちろん税理士の枠を超えたコンサルティングには定評があり相続コンサルタントしても鋭意活動中。
顧客の本当の要望をしっかりと引出し、心情も踏まえたコンサルティングには定評がある。

一般社団法人全国相続鑑定協会理事。
保有資格:公認会計士/税理士/登録政治資金監査人/AFP/不動産鑑定士第2次試験合格